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民法(相続)の条文と私的メモ その2

第三節 遺産の分割

(遺産の分割の基準)

第906条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

  ・相続分に従った分割を行う際に、諸般の事情を考慮しつつ分割を行うという分割の指針を定めたものである。たとえば、農地と商店その他の財産がある場合、農業を継いだ子に農地、店を継いだ子に店舗が、相続分にも配慮しつつでき得る限り帰属するように考慮した分割がなされる。

  ・審判が裁判所でなされる以上、法定相続分に従わなければならず、それを無視した分割審判はできない。(東京高決昭42.1.11

 

(遺産の分割の協議又は審判等)

第907条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。

 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。

 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

  ・審判、調停のいずれの申立が可能。調停前置主義はとられていないが、職権で調停に付すことが可能であり、通常、調停が試みられる。

  ・分割方法 現物による分割、換価分割、代償分割

  ・分割の当事者 未成年者(利益相反)、胎児…相続遺贈に関してすでに生まれたものとみなしている(886.965)、行方不明者(不在者財産管理人が遺産分割協議に参加25から28

相続分の譲渡を受けた人、包括受遺者(審判の請求者でもある、特定遺贈の受遺者は相続人の地位の承継者ではない)、相続債権者・相続人の債権者(家事審判規則105 相当と認めるときは、家庭裁判所は公告をして利害関係人に参加を求めることができる)

 

  ・共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは法律上妨げられず、原判決はこれを許さないとした点で法令の解釈を誤ったものと判示した(最判平2.9.27

 ・特定の土地につきおおよその面積と位置を示して分割した上、それぞれを相続人甲、乙、丙に相続させる趣旨の分割方法を定めた遺言が存在したのに、相続人丁が本件土地全部を相続する旨の遺産分割協議がなされた場合において、相続人の全員が前記遺言の存在を知らなかった等の事実関係の下においては、たとえ相続人らが被相続人から生前本件土地をもらったと信じ込んでいる丁の意思を尊重しようとしたこと等の事情があったとしても、甲は本件土地を丁が単独で相続する旨の本件遺産分割協議の意思表示をしなかった蓋然性が極めて高いものというべきであり、甲のした遺産分割協議の意思表示に要素の錯誤がないとはいえない(最判平5.12.16

  ・解除 相続人全員で合意解除はできるが、法定解除はできない。

(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

第908条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

 

(遺産の分割の効力)

第909条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

  ・遺産から生じる果実  

相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,この賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない(最判平17.9.8)賃料債権は遺産分割の対象とならないが、相続人全員の合意で遺産分割の対象にできる

(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)

第910条 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

 

(共同相続人間の担保責任)

第911条 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。

  ・債務不履行による解除はできない(最判平1.2.9

 

(遺産の分割によって受けた債権についての担保責任)

第912条 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。

 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。

 

(資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担)

第913条 担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。

 

(遺言による担保責任の定め)

第914条 前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。

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